なぜ後入れできる熱収縮チューブがないのか?

後入れ出来る熱収縮チューブはなぜ無いのか?

熱収縮チューブとは、加熱によりチューブ径が縮む特性を利用し、配線や端子などを絶縁・保護するためのチューブです。電線の接続部や端末処理に多く使用され、収縮前に対象物へ通しておき、ヒートガンやドライヤーで加熱することで密着します。

この「収縮する」という特性が大きなメリットである一方で、「後から通すことができない」という制約があります。ユーザーからは「後入れできるタイプはないのか?」というご要望も少なくありません。

本記事では、なぜ「後入れできる熱収縮チューブ」が基本的に存在しないのかを、技術的・構造的な観点から解説します。


収縮構造の基本原理

熱収縮チューブは、製造過程で「架橋→押し出し→冷却」によって、元のサイズよりも大きな直径に成形されています。その後、使用時に再加熱することで元の形状(=小さい径)に戻る「形状記憶」のような性質を持ちます。

そのため後入れさせるためにチューブに切れ目を入れると、収縮する過程で加熱時にスリットが開いてしまい、完全な密着・保護が困難となります。また絶縁性能や防水性能の低下もあり、電気絶縁性が担保されず、非常に危険な使用方法となります。収縮時にも圧力がかかりスリットを入れた部分からズレる、剥がれるという事象も発生します。


「後入れできない」=「設計段階での注意が必要」

熱収縮チューブは、構造的に「先に通しておく」ことが前提の製品です。そのため、配線設計の段階から熱収縮チューブを使う予定がある場合は、以下の点に注意が必要です。

  • 接続前に必ずチューブを通しておく

  • チューブの長さや収縮率をあらかじめ見積もっておく

  • 後入れが難しい場合は、他の保護材(スパイラルチューブやスリットチューブ)を検討する


後入れするしかないときはどうすればいいか

このように先に熱収縮チューブを通しておくことが難しい場合は、収縮率の高いチューブを使用します。例えば当社のロクイチチュブは対角30㎜超のコネクトの上からチューブを入れて、外径5㎜のケーブルまで被覆することが出来ます。

ロクイチチューブ

 


まとめ

熱収縮チューブは、その性質上「後入れ」は基本的にできません。安全性・性能を保つためには、「前もって通す」ことが必要です。後入れ対応が求められる場面では、用途に合った代替製品の選定が重要です。

製品選定に迷ったら、お気軽にご相談ください。

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